世界のまんなかで笑うキミへ



「もう六月も半ば。夏休みなんてあーっという間に来ちゃうからね。夏休みが明けたらすぐ文化祭だよ。古田は文化祭どうすんのか知らないけど、そろそろ何を描くか考え始めなきゃね」



秋の文化祭では、クラスの出し物の手伝いもある。


私は美術部員だし、実力ももう他の生徒に知られているから、色々と作業を頼まれるだろう。自分の作品に取りかかっている暇はない。


文化祭の作品を描くとしたら、主に夏休み中かその前後だ。


古田先輩は三年生だから、遅くとも文化祭頃には引退することになる。


文化祭の作品だけ作って引退、という形もできるけれど、どうするつもりなんだろう。


先輩を見ると、彼はまっすぐに先生を見つめていた。


もう、決めているみたいだ。



「……僕は、夏休みまでにしようと思っています」



………夏休みまで。


ということは、前期の終業式までだ。


他の部活の三年生も、試合や大会次第ではあるけど、そのくらいに引退する人が多い。


古田先輩は進学クラスだし、そのくらいが妥当だろうと思う。


思うけど、やっぱり寂しいなと感じた。




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