世界のまんなかで笑うキミへ



「中野。あんたは、描ける子だからね。技術は他の学校に負けてない。あんたが本気出せば、全国にいける作品だってできると私は思ってる」

「……買い被りすぎです」

「いーや、本当のことだよ。だから迷ってることがあるなら、いつでも相談しに来なさいね。今年は中野ひとりだけだし、そのくらいの余裕は私にだってあるんだから」



先生の言葉はありがたかった。


彼女の美術の腕は確かだ。親身に相談に乗ってくれるだろう。


だけどまだ私は、『迷う』段階にすらいないんだ。色んな分かれ道の前で、ただ呆然と立ち尽くしているだけ。



「………ありがとうございます」



そう一言、返事をするので精一杯だった。


考えなきゃいけない。

もう、そろそろ。


『人に見てもらうための絵』を、描くことを。







「面白い人だなー、あの先生」



部活が終わって、学校から駅までの帰り道。


最近は颯が美術室にくると、そのまま一緒に帰るという流れになっている。


颯は私の隣で、小さく笑う。湯浅先生が気に入ったみたいだ。




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