世界のまんなかで笑うキミへ
「今からクロッキーをします。つまり五分間で颯を描きます。颯は座ったままでいいから適当にポーズとって動かないでください。わかった?」
「くろっきー………あーうん、とりあえず動かなかったらいいんだな」
「うん。きつくなったら言って。タイマー止めるから」
「はいよ。携帯見ててもいい?」
「うん」
颯が片膝を抱えて下を向いた。片手で携帯を触っている。
「じゃあ描くね。スタート」
言葉と共に、携帯のタイマーが動き始める。
黒のボールペンがガリガリと音を立てながら、彼の輪郭を素早くとっていく。
顔、頭、肩、腕、足。
木漏れ日が、彼に覆い被さる。
描きながら、漠然と綺麗だなと思った。
颯は全体的に線が細い。さっき私に『運動不足』だなんて言っていたけれど、彼にはこの歳の男子にある筋肉が少ない気がする。
女の子みたい、と言うと言い過ぎだけど、どちらかというと顔立ちも中性的だ。
綺麗、という言葉がこれほど似合う男の子も珍しい。
描いているうち、見惚れそうになった。