世界のまんなかで笑うキミへ
ーーピピピピ…………。
タイマーの音が、沈黙を破った。
颯が顔をあげる。私もペンを置いて、「ありがとう」と言った。
「五分て、案外短いもんだな。こんな短時間で描けるの?」
「クロッキーだから、ほぼ輪郭だけだよ。詳しくは描き込まない。短時間でちゃんとバランスよく描けてるかが大切なの」
へー、と言いながら、颯が私の手元を覗きこむ。
「すげえ、なんかカッコいいな」
「そう?」
「うん。色はつけねーの?」
「普通はあんまりつけないけど……塗ろうか?」
「塗って!何分固まったらいい?」
なぜかわくわくしている颯を見て、思わず笑みがこぼれた。
「塗るだけだから、そんなに時間はかからないよ。リラックスしてて」
今度は絵筆を持って、颯を見つめた。
……何色で塗ろうかな。
せっかく塗るんだ。見たまんまの色を塗るのはつまらない。