世界のまんなかで笑うキミへ
さっきと同じポーズをとってくれている颯を見つめて、考える。
そして、ぽつりと呟いた。
「颯は、透明に見える」
携帯を見ていた彼の目が、わずかに見開かれた。
数秒経って、自分が言ったことに気づき、ハッとする。
……『透明』は私たちの間では、不用意に使ってはいけない言葉だ。
「あ……違うの、ごめん。今のはそういう意味じゃなくて、その、雰囲気っていうか」
「あ、そういうこと……。びっくりした、今、俺透けてんのかと思った」
はは、と颯が苦笑いを浮かべる。
余計なことで不安を与えてしまって、申し訳なくなった。
「その……いろんな色が似合うんだよ、颯って。逆に言えば、颯にはこれっていう色が見つからない」
私の言葉に、颯が不思議そうな顔をする。
なんとなく筆を手の中で転がしながら、彼を見つめた。