世界のまんなかで笑うキミへ
颯は、透明だ。
どんな色とでも馴染む。溶け合って、一緒になれる。水のように。
だけどそれでいて、どこか他の色と一線を引いているように見えた。
馴染むけれど、彼はどの色と一緒にしても存在感が消えることはない。
どんな景色の中でも彼は映える。そういう意味でも、私は彼を絵の中心に据えたかった。
だからこういうとき、どんな色で彼を描けばいいのかわからない。
どの色を使えば、正しく彼を表現できるのだろう。
「………じゃあ、赤」
「え?」
颯が突然言った。なんのことかわからなくて、見つめ返す。
颯はまっすぐ私を見つめて、「赤使って、塗って」と言った。
「赤……?え、なんで?」
「なんとなく。理央の携帯が赤だったから」
「あ、ああ……」
言われた通り、赤の絵の具をパレットに出す。一緒に橙と黄色も出した。
「じゃ、じゃあ塗ります」
「はい」
颯に絵に関して指定されたのは初めてで、なぜか途端に緊張した。