世界のまんなかで笑うキミへ
▼第五章
きみを中心に世界はまわる
翌日から、私はようやく思い出した『伝えたかったこと』を軸に絵を描き始めた。
先輩の言っていた『伝えたいことさえはっきりしていれば、描き方は決まってくる』という意味が、なんとなくわかりはじめた。
見た人に、ここに来たいと思ってもらうこと。
この場所で生きている人たちに、会いたいと思ってもらうこと。
それが、私が絵を通して伝えたかったことだ。
湯浅先生に方針が決まったことを言うと、彼女は嬉しそうに『そう』と頷いてくれた。
アドバイスをくれた先輩にも話をした。彼は『よかったね』と言って微笑んでくれた。
人に評価されることは、私にとって大事なことだ。
だけど何より、絵を見て心動かしてもらいたいという思いがあった。
今度こそ、才能に埋もれるような絵は描かない。
人の足を止め、この風景に釘付けになってしまうような、そんな絵を描くんだ。
決意して、塗り方を模索していると、だんだんとふさわしい塗り方が見えてきた。