世界のまんなかで笑うキミへ

蓋はこじ開けられた



週末の日曜の昼、私は家のリビングでぼんやりとテレビを見ていた。


いや、視線はテレビに向かっていたけれど、音は少しも耳に入ってこない。


頭の中はやっぱり颯のことばかりだった。



『俺の世界のまんなかにいるのは、理央だよ』



あの違和感の数々も、彼の身体が透けることも。私がずっと忘れていた、『伝えたかったこと』も。


今まで目をそらしていた色々なことを、ようやく私は考え始めていた。


もうすぐ七月に入る。このまま夏休みに入れば、颯はあっという間に私の前からいなくなる。


その前に、すべてを解決させたいという思いがあった。



颯のことを考えれば考えるほど、霧がかかったように何も見えなくなっていく。


自分が昔、誰に『ここに来たい』と思ってほしくて風景を描いていたのか。


それも知りたいのに、思い出せない。


私は記憶喪失か何かだったか?


自分の記憶なのに、抜け落ちているところが多くて怖くなった。




< 223 / 282 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop