世界のまんなかで笑うキミへ
蓋はこじ開けられた
週末の日曜の昼、私は家のリビングでぼんやりとテレビを見ていた。
いや、視線はテレビに向かっていたけれど、音は少しも耳に入ってこない。
頭の中はやっぱり颯のことばかりだった。
『俺の世界のまんなかにいるのは、理央だよ』
あの違和感の数々も、彼の身体が透けることも。私がずっと忘れていた、『伝えたかったこと』も。
今まで目をそらしていた色々なことを、ようやく私は考え始めていた。
もうすぐ七月に入る。このまま夏休みに入れば、颯はあっという間に私の前からいなくなる。
その前に、すべてを解決させたいという思いがあった。
颯のことを考えれば考えるほど、霧がかかったように何も見えなくなっていく。
自分が昔、誰に『ここに来たい』と思ってほしくて風景を描いていたのか。
それも知りたいのに、思い出せない。
私は記憶喪失か何かだったか?
自分の記憶なのに、抜け落ちているところが多くて怖くなった。