世界のまんなかで笑うキミへ
幻が消えるとき
翌日の朝、私は急いで学校へ行った。
息を切らして廊下を歩き、もう見慣れた細い背中を探す。
教室にはいない。まだ来ていないのかもしれない。
早く会いたい。聞きたいことがたくさんあるんだ。
ふいに振り返って、欠伸をしながらこちらへ向かって歩いてくる、彼の姿を見つけた。
「颯!」
駆け寄って声をかける。窓からひゅっと風が入り込んだ。その瞬間、ハッとした。
透けてる。
前みたいに、身体の一部なんかじゃない。彼の下半身のほとんどが透けていた。
「…………………」
その場に呆然と立ち尽くした。
………これの原因も、まったくわからない。
朝から私が彼に話しかけることなんてないからか、颯は驚いた顔をした。
「理央、おはよ。どーしたの」
「………颯…………」
透明になっている彼の姿を見ていると、心臓が嫌な音を立て始めた。
だけど聞かなきゃならない。
ちゃんと私は、もう。
「……わ、私たち………今よりずっと前にも、会ったこと、あるよね?」
声が震えた。かろうじて彼の顔からは目をそらさずに言えた。