世界のまんなかで笑うキミへ
「でも、もう終わりだ」
次々語られる衝撃の事実に立ち尽くしていたら、そんな言葉が聞こえた。
驚いて、顔をあげる。
颯は眉を寄せて、辛そうな顔をしていた。だけど彼は無理にでも笑おうとしていて、細められた目尻に涙が浮かんでいた。
「理央はぜんぶ思い出した。理央の記憶を代償にしたんだから、当然だけど……もうこの身体は、夏の妖精に返さなきゃならない」
どくん、と心臓が大きく音を立てた。
頑丈に閉められた蓋を、無理矢理こじ開けた罰だ。
「でもどうぜ、夏が終わる頃には返さなきゃいけない約束だったんだ。転校するなんて嘘だけど、俺がいなくなるのは嘘じゃない。……ちょっと早まっただけだよ」
颯が消える。今度こそ、本当に。
そう思ったら、すごく怖くなった。
じわじわと視界が歪んでいく。颯はこちらを向いて、悲しそうに微笑んでいる。
………確かに約束したけれど。
何も言わずに消えないって、約束したけれど。
ーーこんなの、酷いよ。
「………っい、嫌だ!やだやだ!」
颯の手をぎゅっとつかむ。彼は少し驚いた顔をして、私を受け止めた。