世界のまんなかで笑うキミへ
そのとき、真横の開いた窓から風が吹いてきて、私の髪を揺らした。
フッと、一瞬だけ周りの音が消えたような気がして、私はハッとして窓を見た。
「…………………」
しばらく窓の外を見つめていたけど、何も起きない。はあ、とため息をついて、また前を向いた。
当たり前だ。そこには、青い空と白い雲が広がっているだけ。
音が消えたような感覚がしたのは、きっと気のせいだ。耳の調子の問題だ。
だけど何故だか、肌に触れる風が、さっきまでとは違うような気がして。
そうしてその名前は、私の耳に突然響いてきた。
「颯(そう)!」
男子の声。
外から聞こえてきたその声に、私はなんとなく横を向いた。
窓から見えるのは、体育館と校舎の間の空間。
体育終わりなのか、すぐ近くの水道で、体操服姿の男子たちが楽しそうに笑いあっていた。