世界のまんなかで笑うキミへ
▼第二章
まるで、憧れのすべて
昇降口を出てから、彼が再び足を止めたのは、学校の駐輪場だった。
橋倉くんは自分の自転車を見つけると、鍵を外し始める。
私は困った顔で、彼の近くに突っ立っていた。
「……えっと、橋倉くん。私、自転車ないんだけど」
「うん。だからうしろに乗って」
「えっ?」
「俺が前に乗るから。中野さん、うしろ乗って」
………ふたり乗りするってこと?
思わずポカンとすると、橋倉くんは当然のように「ホラ」と言って、荷台に乗るよう促してきた。
「み、見つかったら怒られるよ」
「だいじょうぶだいじょうぶ」
へらへら笑って、無責任なことを言う橋倉くん。
私は顔をしかめながらも、今から歩いてかかる時間のことを考えると、心は楽をしたいという気持ちに傾いた。