世界のまんなかで笑うキミへ
ここで生きた証
「今日はありがと。じゃーね」
午後八時すぎ、颯に自転車で送ってもらって、家に帰ってきた。
家の前で颯と別れるとき、私は気分が高揚していて、頭が上手く働いていなかった。
「………うん。こちらこそ、ありがとう」
小さく手を振る。颯はぼうっとしている私を見て、はは、と軽く苦笑いした。
「おやすみ」
彼はそう言って、私の返事を待たずに自転車を走らせていった。
小さくなっていくうしろ姿を見つめながら、冷たい風が辺りに吹いているのを感じた。
その背中が見えなくなってから、玄関の扉を開けて家の中へ入った。
「おかえり~、遅かったねえ」
お母さんが、リビングから廊下にいる私に声をかけた。