世界のまんなかで笑うキミへ
夜が更けて、家族もみんな寝静まる時間まで、私は筆を動かし続けた。
*
翌日は、朝から雨が降っていた。
迷ったけれど、昨日描いた颯の絵は学校に持っていくことにした。これがあれば、なんとなく気持ちが沈まずにいられるような気がした。
お昼休みになって、私のクラスの前を友達と笑いながら歩いていく颯を、教室の中から見かけた。
彼は私には気づかず、そのまま通りすぎていく。
見えない壁が、私たちの間を隔てているかのようだ。なんだか昨日のことが嘘のように思えた。
昨日、颯と海で話したことが夢ではなかったと、あの絵が証明してくれるけれど。
『天動説って知ってる?』
昨日の颯の話を思い出す。
『 俺は、“大きなもの”が動かす世界の小さな存在になるより、俺の大事なものを中心に動かす世界で生きたい。それがどれだけ小さい世界でも、俺はそこで生きていたい』
まっすぐな声と瞳で、彼はそう言った。
それが意外で、なんだか彼が自分と近い存在のように思えた。
だけど今、学校での私と颯の距離を目の当たりにしたら、やはり遠い存在に感じられる。