世界のまんなかで笑うキミへ


夜が更けて、家族もみんな寝静まる時間まで、私は筆を動かし続けた。







翌日は、朝から雨が降っていた。


迷ったけれど、昨日描いた颯の絵は学校に持っていくことにした。これがあれば、なんとなく気持ちが沈まずにいられるような気がした。


お昼休みになって、私のクラスの前を友達と笑いながら歩いていく颯を、教室の中から見かけた。


彼は私には気づかず、そのまま通りすぎていく。


見えない壁が、私たちの間を隔てているかのようだ。なんだか昨日のことが嘘のように思えた。


昨日、颯と海で話したことが夢ではなかったと、あの絵が証明してくれるけれど。



『天動説って知ってる?』



昨日の颯の話を思い出す。


『 俺は、“大きなもの”が動かす世界の小さな存在になるより、俺の大事なものを中心に動かす世界で生きたい。それがどれだけ小さい世界でも、俺はそこで生きていたい』


まっすぐな声と瞳で、彼はそう言った。


それが意外で、なんだか彼が自分と近い存在のように思えた。


だけど今、学校での私と颯の距離を目の当たりにしたら、やはり遠い存在に感じられる。




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