世界のまんなかで笑うキミへ



「………う、うん」

「やった、ありがと。じゃあ、あとで」



颯は私の返事に、上機嫌に頷く。その瞬間、私の周りの空気が、ざわりと揺れた気がした。


声は聞こえない。だけど、空気で伝わる。


『どうして颯があんな子に』という、多くの戸惑いの感情が。



「………………」



冷や汗が、たらりと背中を伝った気がした。


私はその場から逃げるように、早足で歩き始める。いろんな種類の気持ちが、私の中で暴れまわっていた。


…………颯。

颯は、悪くない。


また声をかけてくれて嬉しかった。

だけど少しだけ、わかってほしい。自覚してほしい。


『俺の大事なものを中心に動かす世界で生きたい。それがどれだけ小さい世界でも、俺はそこで生きていたい』


君はそうやって、生きていきたいのかもしれない。


だけど君は、他の人にとっては『大きなもの』なんだ。


世界を動かす、重要な存在だ。君の一言で、私みたいな小さな歯車は、いとも簡単にその動きを止められてしまうこと。


………それをどうか、わかってほしい。






美術室の扉を開けると、既に先輩がいた。




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