世界のまんなかで笑うキミへ
「………う、うん」
「やった、ありがと。じゃあ、あとで」
颯は私の返事に、上機嫌に頷く。その瞬間、私の周りの空気が、ざわりと揺れた気がした。
声は聞こえない。だけど、空気で伝わる。
『どうして颯があんな子に』という、多くの戸惑いの感情が。
「………………」
冷や汗が、たらりと背中を伝った気がした。
私はその場から逃げるように、早足で歩き始める。いろんな種類の気持ちが、私の中で暴れまわっていた。
…………颯。
颯は、悪くない。
また声をかけてくれて嬉しかった。
だけど少しだけ、わかってほしい。自覚してほしい。
『俺の大事なものを中心に動かす世界で生きたい。それがどれだけ小さい世界でも、俺はそこで生きていたい』
君はそうやって、生きていきたいのかもしれない。
だけど君は、他の人にとっては『大きなもの』なんだ。
世界を動かす、重要な存在だ。君の一言で、私みたいな小さな歯車は、いとも簡単にその動きを止められてしまうこと。
………それをどうか、わかってほしい。
*
美術室の扉を開けると、既に先輩がいた。