世界のまんなかで笑うキミへ



私にとって颯は、私が欲しいものすべてを手にしている、まるで憧れのすべてのような存在だ。


だから彼は、いろんな色をその身に持っている。私にない色を、たくさん。



濁りない彼の透明は、限りなくカラフルに、私の目に映る。




「………なあ、理央」



颯は絵から目を離すことなく、口を開いた。

その声は、彼にしては珍しく弱々しくて、それでいて真剣さを帯びていた。


「………なに?」


てっきり感想を言われるものだと思っていた私は、彼の思いがけない言葉に、目を見開いた。



「俺、夏が終わったら転校するんだ」



………え?


目を丸くした私に、颯はやっぱり絵を見つめたまま、「だから」と言った。



「………転校する前に、あの絵を描いた奴に、会ってみたかった」



あの絵。


きっと、私が去年の文化祭で描いた絵のことだ。颯が私を知るきっかけになった絵。


………もうすぐ転校するから、颯は。


最後に、ずっと気になっていた私と、話してみたかったってこと……?




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