冷たい男
「今年の3月に高校を卒業された城﨑-キザキ-財閥のご令嬢で、お母様が僕のお客様なんです」



「そうだったの?良いお嬢様じゃない」



将李から写真を受け取った母親は、満足顔。

写真だけでは、人の内面なんてわからないのに。



「将李はどうだろうか。お父様とお母様の都合が良い日に会ってみないか?」



「会うからには、受けるんですよね……?;;」



「それはもちろん。前向きに考えて会うべきだろう」



「でしたら、ここで断ります」



見た目は悪くない。

かといって、将李のタイプではなさそうだ。

それに、以前から私だけは将李に恋人の存在を明かされており、付き合いはもう3年になる。

今更その彼女と別れてお見合い結婚なんて、将李は絶対に嫌だろう。

金持ちの息子らしくない。

特に夢など見る人間らしさはまるでない将李だが、一途ではある。



「先方様に不備があるわけではないですが、僕は自分の目で見て、自分で触れてから決めたいので、お見合いは結構です」



「あら、勿体ないわよ?こんな良いお相手」



「だから、自分で決めたいんです。先方様に不備はなくても」



「そう……。将李が言うなら、諦めるしかないかしら」



母親のしつこさにか、素が混じった将李の身を案じながら、不服そうな母親を見つめる。

諦めつかないのか、母親は「貴方は?」なんて統李に訊くも、首を左右に振られてる。
< 11 / 53 >

この作品をシェア

pagetop