冷たい男
寝間着代わりのキャミソールにショートパンツでも、気にせず荷物を取りにリビングへと行く。



「お前、逃げられると思ってるのか」



「逃げなきゃ、頭がおかしくなる……っ……」



「……何でだよ」



「好きだからだよ……っ……!」



私の涙でぐちゃぐちゃの顔は、見るに耐えなかったんだろう。

目を逸らされたけど、気持ちを叫んだ私に視線を戻した風岡。

驚いただろう。

そんな素振り、見せた事はなかった筈。

1年間、好きだと言った事はない。

恋人だけど、恋人じゃない。

好きと伝えてしまったら、この関係はなくなってしまうと思ってた。

土日に違う人を抱いてる風岡には、好きという恋愛感情は重いとわかってた。



「好きじゃなきゃ、抱かれない……。初めてだったんだよ……?遊びで、ましてや担任に抱かれる筈ないじゃない……っ」



「……好きって何だよ」



「…………?」



私はもう、帰されるかと思ってた。

なのに風岡から出た言葉は、意外なものだった。

好きって言うのは……と、説明するには難しい。

でも、乾いた笑みを見せた風岡が、どんな状況だろうと愛おしく、気付けば私は、彼にキスをして居た。



「私は……好きだから一緒に居たい。キスしたい。抱かれたい……。その目に、映りたい……」



「そんな女、普通は居ねぇよ。……ライカも、俺を好きだと言ってたくせに、別の男を選んだ。いくら俺に金があろうと、その上を選んだ。世の中、愛なんてねぇんだよ」



「……どういう事」



風岡にお金がある?

その上……?
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