冷たい男
『何だ。勝手に帰っといて何の用だ』



「侑李の兄の、足立将李と言います。用件は今すぐ市立大学病院まで来て下さい。侑李が事故に遭いまして。後は病院で話しましょう」



口振りだけでわかる、風岡蓮也という電話の主の冷酷さ。

用件だけを伝えて電話を切り、煙草を脚で踏み消した。

何が美味くてこんなものを。

救急外来の待合廊下へと戻り、頼香と離れた位置に腰を下ろした。



「今から風岡蓮也が来る」



「え……?」



「知ってるらしいな」



「何で、それを……」



「好きだって事も、知ってる」



「それは、昔の……っ!」



否定しようが、今の俺には関係ない。

虫の居所が相当悪い。

自身のスマホを見れば、兄から≪これから向かう≫というメールが着てた。

今から来ても、どうせ朝には帰る3人を呼んでも役に立ちはしない。

けど、連絡しないわけには行かないだろう。



「……蓮也……」



両親と兄より、先に着いた風岡。

俺より先に気付いた頼香。

立ち上がり、俺が頭を下げると下げ返して来る風岡は、冷酷なわりに人間味が多少はあるようだ。

何を映してるのかわからないような漆黒の冷めた目をしながらも、どこか慌てて来た様子が伝わって来る。

何が、どこがってわけじゃない。

そう感じるだけだし、気のせいかも知れないが。



「お電話ではどうも。今、侑李は手術中ですがどうぞ」



とりあえず、座って話そう。
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