冷たい男
「どこが?何で将李君を傷付けるの?」



「考えてみろ。彼氏がお前と会えないからって、他の女と楽しく電話してたって言ったら気分悪いだろ」



「でも私は、蓮也と幼なじみだから……っ!」



「そんな言い訳、後の祭だろ」



「……それは……」



口は悪いが、何だコイツ。

的を得た発言ばかりして、こっちは何も言う事なし。

頼香も反論出来なくなってる。

あんぐり顔で風岡を見てると、「面倒くせぇ」とまた漏らす。



「それなり本気って事ですか」



「あ?」



「侑李との事」



教師であるならば、もう少し態度を考えるべきだろうが、今は侑李への気持ちを確かめたい。



「悪いけど、生徒に手を出したのは、あいつが最初で最後。27になってまで、俺はガキと遊ばねぇよ」



「大人の女なら遊ぶって事ですか」



「てめぇふざけんなよ。揚げ足取ったつもりだろうけどな、俺には過保護で土日に交互に泊まりに来るような母親と姉貴が居る。無理に決まってんだろ」



「キレた……;;」



一見、人間味がないこの風岡。

実は侑李よりも冷たさはないのかも知れない。

かと言って、侑李がそれを信じるかどうか俺は知らない。

やり直すならやり直せば良いし、別れるならそれまでの話。



「蓮也、変わったね……」



「何が」



「蓮也は怒りもしないけど、優しくもない。ただ、彼女の話をすると声が柔らかくなる位だったよね……。凄いね、侑李ちゃん……。無自覚だけど」



それは言えてる。

自分は普通の人間。

統李と俺を、本当の兄か疑って掛かった日もあったし。
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