冷たい男
第三章「曖昧な記憶」
目を覚ますと、私はたくさんの人たちに見守られて居た。
痛む頭と身体のせいで、起き上がれずに見える範囲で目を動かして周りを確認。
うん、病院だ。
それはわかるけど、何故ここに怪我をして居るのか。
「先生、何をされてるんですか?」
窓の外は明るく、まだ学校の時間だとわかる。
なのに、授業をせずにここに居て良いの?
「侑李?どうしたんだ?」
「何が?それより、将李お兄さんも早く学校へ行かないと卒業出来ませんよ」
母親の手前、敬語で訊くも何かがおかしい。
どうして将李は制服を着てないのか。
統李は事務所を立ち上げたばかりなのに、こんなところに居て良いのだろうか。
母親だって仕事があるでしょ?
「3日間寝てたし、そのせいかしら……」
「侑李?今日は何月何日かわかるか?」
「えーっと……」
母親のボソボソと何か言った事が気になりながらも、将李の問い掛けに耳を傾けた。
しかし、今日が何月何日かわからない。
私は何故か春と感じるのに、みんな半袖だ。
「わかった。侑李は何歳だ?」
お医者さんごっこでも始めたんだろうか。
将李の頭はおかしくなってしまったのか。
「16歳だよ!私は、将李お兄さんの二つ下でしょ?何で忘れるのよ」
「将李、先生を呼ぼう」
「統李お兄さんも心配しないでよ!私、何でか身体が痛むけど、元気だよ?」
「「「『…………』」」」
何で、みんな黙るの……?