冷たい男
私の申し出も虚しく、お医者さんが呼ばれ、将李と同じ質問をされた。



「お母さん、ちょっと……」



母親を連れ出すお医者さん。

何をコソコソと話してるのか。



「侑李?侑李は今、18歳なんだ」



「……え?」



「高校3年生。この人は、確かに侑李の担任の風岡蓮也先生に違いない。けど、侑李の彼氏でもあるんだ」



「……。先生が、彼氏……?え?」



どうして、風岡が私の彼氏?

いつの間にそうなったの?

統李は何事を嘘を吐くような人ではないけど、今は信用ならない。

確かに風岡は好きだよ?

けど、付き合ってる筈はない。

知り合ってまだ1年も経ってないのに何で……?



「彼氏……っ?」



「侑李……?」



「彼氏……、彼氏……っ」



なのに、そのワードが胸を締め付ける。

指先が痺れ、息が上がる。



「何で……っ!」



「侑李?侑李っ!落ち着け侑李!」



何故か込み上げる涙。

点滴の針を抜きながら、逃げたい衝動に駆られる。

統李を押し退けて、私に声を掛けながら、肩を掴んで来る将李の腕を掴む。



「お兄ちゃん……お兄ちゃん……っ……!」



「“お兄ちゃん”……?」



「おかしいの……!頭が……、胸が……!」



「すぐにはわかる筈ないよな?苦しいな?シンドイな?」



「“シンドイ”?」




「あの……、私……、先生を……?」



先生を好きな気持ちがあるのに、付き合ってるという覚えのない事実を考えれば考える程に、苦しみが押し寄せるんだろう。

涙が止まらないのだろう。
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