冷たい男
「……侑李」



「はい……お兄さん」



「お兄ちゃんて何だ」



「…………」



「将李も、どうなって居るんだ」



風岡のお陰で、徐々に冷静さを取り戻した私に、統李から思い掛けない質問が。

そう言えば、余裕がなかったとはいえ、将李も私も“素”の自分になってた。

将李は舌を出しながら、やらかしたと言わんばかりに顔を背ける。

私もどう返事をすべきかわかず、天井を見つめる。

いつかはバレてしまうと思ってたけど、いざそうなると言い訳も何も浮かばない。



「将李と侑李は、足立家の人間としての誇りはないのか!!」



私たちの態度は、普通の人ならいちいち怒らないだろうけど、統李の逆鱗には触れてしまったようだ。

怒鳴られ、今更と感じた私たちは、「ない」とそれぞれ正直に答えた。



「お金持ちとか、威張ると言うのかな。全く興味がないんだよね……」



「俺は、お袋に呆れてる」



「お、“お袋”……?;;」



「私、そんな風に呼ぶような子に育てた覚えはないわ!!」



唖然とする統李に、ヒステリックのように叫ぶ母親。

“お母様”ではなく、本当はお母さんとかシンプルに呼びたい。

一つ一つが堅苦しい生活は、うんざり。



「育てたのは家政婦」



「将李っ!!貴方はいつもいつも私の気分を害するわね!!」



「や、ただの本音だけど……」



天井から、無表情の風岡に視線を移す。

完全に、呆れてる。

母親と兄たちをシャットアウトしてる。
< 33 / 53 >

この作品をシェア

pagetop