冷たい男
「将李は私の何が気に入らないの!」



「今更だろ。それ」



「私は何一つ、間違った事はしてないわ!」



「そうでしょうね。子供まで支配下においてますもんね」



「……将李……」



将李の諦めた態度に、母親は眉を下げる。

私は天井を見ながら溜め息。

統李は母親の気持ちを持ち直そうと試みてるが、そうは簡単に操れる筈もない。

うとうととし始めると、風岡に布団を掛け直された。

こんなタイミングで寝るつもりはなかったのに、やけに脳が休みたがってる。

痛みよりも、何故か疲れが大きい。



「ここに……居て……?」



「あぁ」



「何か……目が覚めなくなりそう……っ」



どうしてだろう。

ここは無菌室ではないのに、私を手を握る風岡の顔がぼやけて見え、一瞬、誰かわからなくなる。

けど、すぐに思い出して、あの明日をもわからなかった日じゃないと自分に言い聞かせる。



「ちゃんと居る。起こしてやるから、少し休むんだ」



「……恋人……じゃなきゃ……、」



「侑李」



「恋人……じゃなきゃ……っ」



ふと口に出した言葉の意味は、自分が言った事なのにわからない。

私は自分で寝に入ってると気付いて目を閉じる。

そして何秒とかからずに、眠りに就いた。





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