冷たい男
―将李SIDE―



「侑李……?」



「眠りましたね」



さっきまで、起きてた筈の侑李が寝た。

それに驚いた母親だが、風岡の一言にホッとしたように近くにあったパイプ椅子に腰を下ろした。



「バイタルにも異常はないですし、また薬の効果でしょう」



脈拍を見た医者は、点滴も確認して病室を出て行く。



「先生?侑李、何かあったのでしょうか」



「何かって」



「記憶がないのは、頭をぶつけた事もあるでしょうけど、ショックな事があってじゃないかと、ドクターが仰ったの」



「…………」




「侑李は人に弱音を吐く子ではありません。何かご存知ないですか……?」



「「…………」」



この期に及んで、まだそんな事を言ってるのか?

侑李は弱音を吐かないんじゃない。

吐けなくなってるんだ。

記憶をなくした理由には、頷けなくもない。

だが、母親が侑李をわかってないと呆れる。

ベッドの脇に座ると、しゃがんでた風岡と目が合った。

風岡はやれやれと立ち上がり、侑李に握られた手をそのままに、母親を睨むように見た。

睨んでるつもりはないし、目が鋭くてそう見えるだけだが。



「まぁ、傷付けたのは俺でしょう。でも、侑李は弱音を吐きますよ」



「えっ……?」



「だから、将李とは仲良く安心した家族で居れたんでしょう」



「…………」



どうなんだろうな。
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