冷たい男
「どうなんでしょう?侑李は」



「んー。事故の瞬間の事は、恐らくショックで覚えてないと確定出来ます。しかし、さっきの会話は……夢?なんでしょうね。僕は脳外科の医者じゃないので、詳しくは言えませんがね」



「……夢……」



見たような、見てないような。

風岡が何だか優しかった。

現実か夢かはわからないけど、何か会話した。

その時、この人はこんなに優しかったか。

こんなに温かな人だったかと、疑問に思いながら居たら、身体に走った激痛に目が覚めたんだ。



「夢、ですか……」



母親も納得してるのかしてないのか、曖昧な感じで頷きながら、私を見てる。



「もう一度、検査をしましょう」



「はい。お願い致します」



「では、お大事に」



「本当にありがとうございました」



検査したところで、夢かどうか何てわかるのだろうか。

溜め息を漏らしながら、繋がったままの風岡の手を握る力を強める。

事故の瞬間は本当に覚えてない。

眩しい光が私に迫った後の記憶がない。

でも、その前の事は覚えてる。

だけど、風岡は何故ここで教師である事とに加えて、“彼氏”だと言ってたのだろう。

風岡は、頼香ちゃんが好きなんだよね?

それで私は貴方を拒んだ筈だ。

私が意識をなくしてる間、みんなの中で何があったのだろうか……。
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