冷たい男
私が目覚めた事にとりあえず安心したのか、仕事ねと行く母親と統李にお礼を告げて送り出すも、視線は天井を見つめたまま。



「どうして……?」



「何がだ」



「どうして、彼氏なの……」



2人が帰った為、私は将李がまだ居ようと素直に訊ねた。

将李に聞かれても、困る事はない。

聞いたからといって、何があったか探って来るかも知れないけど、口外する事はない。

騒がず、ふーんと流す事はわかってる。



「好きだからだろ」



風岡も将李を気にせず答える。

でも、優しいと思ったのは私の勘違いなんだろうか。

私をおちょくり、楽しんでるのか。



「頼香ちゃんの間違いでしょ」



「お前が、間違ってる」



将李がベッドから退いた代わりに、風岡がベッドに腰掛けながら答えた。

空気を呼んだか、病室から出た将李。

荷物が置いてある為、帰ったわけではない。

廊下に居るかも知れない。

だが、私は点滴が繋がる右手で風岡の肩口を引っ張った。



「何が間違ってるの」
 


「俺は、お前だから家に上げた。お前だから抱いた」



「じゃあ……土日の説明はどうつけるの?」



「過保護な母親と姉貴が、毎週交互に泊まりに来てただけだ。成人した俺を心配して。それを何が悲しくて、好きな女に言わなきゃいけないんだ」



「……信じて良いの?」



私の頭の横に手を付き、繋いでた手を離して頭を撫でられた。

それだけで、信じようとする私は馬鹿なのか。
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