冷たい男
第四章「共に生きる」



入院から2週間が過ぎ、ようやくベッドから出る事を許された。

脚は無事の為、さっそく病室を抜け出した。

点滴が下がるスタンドを押しながら外に出ると、心地良い風が吹いた。

夕焼けを見つめてると、何だか無性に泣きたくなって来た。

理由は特にないのに、数年ぶりにまともに見上げた空は、あまりにも綺麗だった。

窓からや、風岡の住む高層マンションから見る景色とはまた違う。



「何してる」



「……おかえり」



今日もお見舞いへと来てくれた風岡。

私は涙を拭いながら、夕陽を指差した。



「綺麗で、見とれてた」



「…………」



風岡は何も言わず、私と並んで立って空を見上げた。

そんな風岡のパンツのポケットから煙草を奪おうとすると腕を掴まれ、引き寄せられた。




「何……っ??」



「一緒に辞めろ」



「何を?」



「煙草。再発しても、俺は面倒を見ない」



「何で知って……っ?だいたい、風岡は辞めなくても良いでしょ」



「介護されたくねぇ。一緒に死ぬんだ」



「……風岡っ……」



話した事のない病気の話を、いつ聞いたのかはわからない。

だけど、風岡の気持ちがハッキリと伝わった。

普段は口数が少なく、口も悪い。

本心をあまり言わないのに、今はちゃんとわかった。

風岡が言う“一緒に死ぬ”とは、将来の事。

今すぐではなく、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんやななった時の話だろう。
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