冷たい男
「足立さん探してたのよ?先生がお話しあるらしいから、早く病室戻って!」



「すみません」



病棟に戻ると、主任看護師さんに怒られた。

トイレに行けるようになったってだけであり、外に出て良いという許可が出たわけじゃない為、素直に謝って病室へと戻る。

しばらくしてやって来たのは、今回の事故の処置を担当してくれた先生ではなかった。

以前に入院してた時の担当で、癌専門医である竹内-タケウチ-先生であった。



「……何で、先生が……?」



「それは、足立さんがずーっと検査に来なかったからだよね」



「すみません……」



厭味たっぷりに言い切った竹内先生に、苦笑いで謝る。

風岡は窓の外を見つめ、私は1人で冷や汗を流しながら、先生の用件を聞く。

今のところ、不安しかない。



「悪いけど、こそこそと血液検査とか、君にバレない程度に調べたよ」



「…………」



「煙草とお酒は成人してからにしようか」



「あ、それなら――…」



「後2年は、最低でも頑張って」



…それって……。



「今は特に異常は見られなかったよ」



「さすが」



「……今回は褒められたもんじゃないと思うよ?検査来なかったからね」



「あ……はいっ」



将李みたいに自惚れてしまったが、竹内先生のお怒りは変わらないらしい。

かといって、患者に怒鳴るようなお医者さんではないが、何度も言われたくはない。

密かに布団の下でガッツポーズをし、気持ちの昂ぶりを抑えた。
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