冷たい男
それにしても、何故に彼女はここを動かないのだろう。

普通なら、扉を閉めるなり、何かしら見ないように行動するんじゃないの?



「もっ……ストップ!!;;」



私を押し倒してまで続けようとした風岡の顔を押して離すと、嫌そうな顔して座り直す。



「蓮也、これは嫌がらせ?それとも当て付け?」



その風岡の背中に向かって発せられた声は、頼香ちゃんらしくない。

久々の対面だけど、何となくわかる。

不機嫌なのか、涙を堪えてるのか。

顔は強張ってるのに、目には涙が浮かんでる。



「どっちも同じだろ」



「……嫌がらせなんだ?」



「お前が来るなんて知らなかったのに、どうして嫌がらせになる」



「……何よ。蓮也のせいで、別れたのに」



それは、将李とだよね……?

それがどうして風岡のせいになるのか。

結局、2人はそこまでの関係でしかなかったんじゃないの?

兄の恋愛に興味がない妹としては、どうでも良い話なのに、風岡の責任になってる事は納得が行かない。

将李は一言も風岡を責めてないし、会話は少なくても同じ空間に居る中で、気まずそうとか感じた事がない。

私は鋭いわけではないけど、鈍感でもないからわかる。




「何で俺なんだ」



「自分だって侑李ちゃんという彼女が居ながら私と電話してたのに、私だけ悪者……。将李君にも言われた。“弄ばれた気分で、一緒に居ると腹立つ。俺はお前の財布じゃない”ってね」



その割に、落ち込んでは居ないんだ。



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