冷たい男
「頼香ちゃん……」



「何?あ、ごめんね!せっかくお見舞いに来たのに、気分害しちゃって……」



「違う。そんなんじゃない」



「え……?」



「お兄ちゃんの事、お金目当てで付き合ってたなら、お金返してくれない?あれがなければ、母親と揉めなかったんだから」



「別に、将李君の事は……!」



…言う筈ない、か。

例えそう思ってたとしても、認める人なんて居ない。

訊いた私が馬鹿だったと思い、頼香ちゃんに首を振って、何も言わせなかった。

私が何を言おうと、将李といい、今更騒いでもしょうがない。



「お兄ちゃん思いなんだね」



「別に。兄が誰と付き合って別れようと、気にしない。ただ、家族が壊れたら面倒なだけ」



「冷めてるとこ、そっくりで仲良しだと思ったけどな?」



「お兄ちゃんにもよく言われる。冷めてるって」



厭味をものともせず返した私に、一瞬、睨まれたような気がした。

その刹那、煙草が吸いたいと思い、ベッド横の収納棚に置かれたシュガレットケース代わりのポーチに手が伸びた。

しかし、煙草は捨てた為に中身は空。

オマケに反対の手を風岡に引かれた。

思い出された約束に、ポーチを離した。

気持ちのぶつけどころがない。

けど、誰かに八つ当たりする程に苛立ってるわけじゃない。

ただ、気分が悪いだけ。
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