春、さくら、君を想うナミダ。[完]
4月7日。
今日は、高校の入学式。
2階にある自分の部屋で、鏡の前に立つあたしは長い髪を整える。
胸元まであるストレートの黒髪、斜めに流した前髪。
新しい制服に身を包んだあたしは、鞄を持って部屋を出た。
静まりかえった家の中、きしむ階段を下りていく。
あたしが起きる頃には、すでにお父さんは仕事に出かけていて、帰りも遅い。
それは、ここに引っ越して来る前から変わらない。
お父さんの顔を見ることができるのは、お父さんの仕事が休みの日の朝くらいだった。
階段を降りたあたしは、
廊下を歩いてキッチンや居間を通り過ぎ、廊下の奥にある和室へ向かう。
お母さん……やっぱり、ここにいた。