春、さくら、君を想うナミダ。[完]
お母さんの冷たい態度は、いまに始まったわけじゃない。
昔からずっとそうだった。
あたしは、なにも悪いことなんてしていないのに。
お母さんの言うとおりに
ずっと“イイ子”にしてきたつもりなのに。
それなのにお母さんは、
いつだってあたしに冷たかった。
「学校、行ってきます」
和室からいなくなろうとすると、お母さんの細い声が聞こえた。
「朝ご飯は?」
食べると言っても、どうせひとりで寂しく食べることになる。
「いらない」
お母さんの態度に反抗するみたいに、あたしもそっけない言い方になる。
「そう。いってらっしゃい」
だけど、そんな反抗したって無意味だってことはわかっていた。
あたしの気持ちなんてお母さんは考えたりしない。
あたしのことなんて、どうだっていいんだから。
わかっているはずなのに、
あたしはまだ、心のどこかで期待してるのかな。
あたしことを見てほしいって。
お母さんに愛されたいって。
「バカみたい……」
家の玄関を出た瞬間、ぽつりと一言つぶやいた。