春、さくら、君を想うナミダ。[完]
「あー、どうだろうな。この本読んでから、そんなこともあるのかなーって少しは考えたけど。さくらは?」
「うーん……あたしは信じてるっていうよりも、生まれ変われたらいいなぁってくらいかな。難しいことはあまりわかんないけどね」
もし前世や生まれ変わりが、本当にあるとして。
いまを生きているあたしに前世の記憶がないということは、
もし生まれ変わっても、
前世の記憶は忘れてしまうってことだよね。
「じゃあ、もし生まれ変わったら、さくらは何になりたい?」
「え?あたしは……」
言葉につまるあたしは、遠くを見つめる。
もし生まれ変われたら、あたしは……。
「みんなに愛される人になりたいかな。あなたみたいに」
「え?俺?」
「うん。だって友達もたくさんいて、いつも楽しそうだから」
「そう……見える?」
あたしは、彼の目を見て笑顔でうなずく。
「あたしなんて全然ダメ。クラスでも浮いてて、高校に入ってから、まだひとりも友達できなくて」
「ちょっと待って、ごめん。俺……さくらと友達になってるつもりだった」
そう言って彼は、少し気まずそうな表情を見せた。