春、さくら、君を想うナミダ。[完]
え……?
あたしと友達に……?
「あ、あたしこそ、ごめんなさいっ。友達だと思ってくれてるなんて思わなくて……」
いままで男の子の友達なんて、いなかったから。
「じゃ、改めて……」
彼はベンチから立ち上がると、
あたしの前にしゃがみこんで、右手を差し出した。
「俺と友達になってくださいっ」
あたしの瞳を見つめて、彼はニコッと笑う。
初めてだった。
いままで、こんなふうに優しくしてくれる男の子なんていなかった。
素直にうれしかった。
「こちらこそ、お願いします」
あたしは彼の右手を、両手でそっと包みこむように握りしめた。
「あーよかった。断られたらどうしようかと思った」
無邪気に笑う彼を見て、あたしもつられて笑顔になる。
――こうして、あたしは彼と友達になった。
ふたりの距離は、時間とともに少しずつ縮まっていく。