春、さくら、君を想うナミダ。[完]




2017年 4月9日。



穏やかに晴れた、爽やかな朝だった。



碧く澄んだ静かな湖。



湖畔沿いの桜並木は数キロにもわたって続き、



春になると桜のトンネルができる。



愛犬のモモと一緒に、



あたしは春風に舞う桜の花びらの中を歩いていた。



「桜きれいだね、モモ」



あたしは、前を歩くモモの後ろ姿を見つめる。



「春が……来たんだね」



切なさで

胸がぎゅっと締めつけられる。



上を見れば、



あたたかい陽の光を浴びて咲き誇る桜と、



花びらの隙間から見える青い空。



「この景色を見るのも、今日が最後なんだ……」



空に向かってつぶやいたあたしの瞳には、涙があふれる。
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