春、さくら、君を想うナミダ。[完]
あたしは何も聞こえないフリをして、毎日を過ごすことしかできなかった。
悪口を言われるたびに、
胸に刃物が突き刺さるような痛みを感じていた。
見た目は、どんなに平気なフリをしていても、
心だけはごまかせなくて。
授業中も休み時間も、窓の外の景色を眺めるフリをして、
泣きそうになるのを必死に堪えていた。
ただただ我慢することしか、できなかった。
好きでこの顔に生まれてきたわけじゃない。
地味で暗いけど、誰かに迷惑かけた覚えはない。
人に嫌われるようなこと、
ムカつくなんて言われるようなことをした覚えもない。
そうやって、心の中でしか吐き出すことができなくて。
いつも苦しかった。
つらくて、悲しくて、どうしようもなかった。
どこか遠くへ逃げてしまいたいって、
そう何度も思った。
「さくら、なんか考え事?」
ベンチに座っている彼が、横からあたしの顔を覗きこむ。