メガネ男子と同居中

「きゃっ!!!」

突然、教室に女子の高い声が響く。

「っちょっとー!!濡れちゃったじゃん!!」

え。
なに?

声の先を見ると、そこには友達のユキが黒瀬の席の方に立っていた。




なんだろう。
ユキはすごく怒っていて、黒瀬は俯いている。


「どうしたの?ユキー」
優子がユキに聞く。

「この、クソメガネのせいで制服汚れたんだけど!」

ユキは大声でそういう。


ク、クソメガネ…。
そうだけど。
性格ちょっと悪いし。


状況をよく見ると、黒瀬の飲んでいたお茶が、歩いてきたユキの制服に何らかの理由でかかったらしい。


きっと、ドジなユキが何にもないとこで転けて、たまたまそこにあった机、黒瀬の席に手を置いてしまって、その拍子でお茶が溢れたっぽいけど…。


この空気、どーみても地味で暗くてガリ勉の黒瀬が悪者。


「つーかさ、キモいんだよね、あんた。あんたの不注意で濡れたんだから、謝れよ!その口、なんのためについてるわけ?!」

きっとユキは月に一度のあの日だったのかもしれない。

サバサバした性格のユキだけど、普段はこんな風に怒鳴ったりしないもん。


「このガリ勉クソメガネ!!」


!!

ユキはそういうと、黒瀬の手をひっぱたいて、その勢いで、お箸が吹っ飛んでしまう。

「ちょ、ユキ…!」

「莉子…」

少しやりすぎなユキを止めようとしたけど、優子に手を掴まれて止められてしまった。


黒瀬に対してのユキの攻撃は続く。

「弁当、食べたかったら拾えば?」

ユキは黒瀬にそう吐いてから、イライラしながら教室を後にした。


「ちょっとユキ見てくる!」
優子はそう言って、ユキを追いかけた。

教室はシーンとした後に、落ちたお箸を拾う黒瀬の悪口が始まる。


『汚い』『キモい』『最低』

そんな言葉が飛び交う。


どうしよう。
こんなやつと暮らしてるってばれたらマジでシャレにならない。


!!


ほんの一瞬だけ黒瀬と目が合う。


な、何なのよ。


どうしよう。
こいつが私と住んでること話したら…!



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