メガネ男子と同居中
「黒瀬っ!」
テストが始まる前、朝のHRを終えてから私は黒瀬に会いに図書館に向かう。
チョコ…一応お礼しなきゃ。
嫌いなのに、会いたくないのに、結局私ばかりが黒瀬に会いに図書館に顔を出している。
いつもの本棚から一冊の本を取り出して、読んでいた黒瀬がこちらを振り返る。
テスト当日なのに、なんで本なんか読んでいるんだよ。
「黒瀬、チョコ…ありがとうね。一応、お礼言いたくて」
「お礼?フッ。まだテスト受けていないのにですか…」
「は、はぁ?」
素直に「どういたしまして」と言えない黒瀬にカチンとくる。
なんなのよ。
「水谷さん、本当、おめでたい人間ですね。僕に会いに来る暇があるなら勉強でもしていばれいいのに」
「そんな言い方ないじゃない…!」
「こんな言い方くらいされますよ。僕があなたのために頑張ってる間、あなたはチャラチャラした人と…」
「まだ言ってるわけ?!」
「ずっと言いますよ?ああいうチャラチャラ人と付き合うなんて、水谷さんも残念な人間で…」
バシンッ
あ。
気づけば、私は黒瀬の頬をビンタしていた。
でも、こんなんじゃ収まらない。
「なんで?なんでいつもそういうことしか言えないわけ?だから友達がいないのよ!私だって、黒瀬に感謝してるの!これでも。なのに、どうしてわざわざ言わなくていいこと言うのよ!」
感情が高ぶって、少し泣きそうになるのをぐっと堪える。
「…チヤホヤされて生きてきた水谷さんに僕の何がわかるんですか?友達がいない?水谷さんだって、僕にはそう見えますけど。心から信頼してる人なんて、水谷さんもいないでしょ」
黒瀬はそう言うと、私に叩かれた頬を押さえて、図書室を出て行った。
なんなのよ。
黒瀬の最後の言葉に変にぐさっときてしまった。
だって。
今までそうだったから。
嘘ついて付き合ってきてばっかで。
なんで、黒瀬にそういうこと言われなきゃいけないのよ…。