メガネ男子と同居中
「へ?」
いきなり名前をつぶやかれ、黒瀬の方を見る。
「…母からなんか聞きました?」
「え?!」
黒瀬の中学の頃の写真を見せてもらったとか言えるわけないじゃん…。
私の異変にすぐ気付く黒瀬は、もう超能力者なんじゃないかと思うくらいだ。
「な、何も?」
「水谷さん、すぐ顔に出るので嘘ついても時間の無駄ですよ」
「うぅ…顔に出るってどういうことよ」
「そのまんまです。僕にあんなことされたのになにもなかったみたいにこうしてやってくるなんて…何か吹き込まれたか…ただのバカなのかのどちらかです」
「はぁ?!バ、、バカとはなによ!あんたね、そんなんだから人に誤解されたり喧嘩売られたりすんのよ!」
「なんだか僕に気を遣ってるように見えたのでどうしたんだろうって思っただけですよ」
聴いたから。
麻友さんから。
黒瀬が何かを抱えていること。
だから…。
「…ごめん黒瀬。黒瀬に聞くなって言われたのに、聞いちゃった。すばるくんのこと」
「…やっぱり。また母が勝手にしゃべったんでしょう?水谷さんだけのせいではありません」
「あと…」
「…ん?」
「中学の黒瀬の写真見せてもらった」
「はっ?!」
「…いや、ごめん!興味本位というか…目を閉じる隙を与えなかったといいますか…」
私だって、黒瀬のあの笑顔の写真がすごく貴重で、きっと黒瀬が今一番見られたくないものだってくらい察することはできる。
私は本当に申し訳ないと思いながら、黒瀬の顔を恐る恐る見る。
え…。
真っ赤…。
テラスに少しだけあるイルミネーションでよく見ないとわからないけど、それでも黒瀬がすごく恥ずかしそうにしてるのは伝わった。
「そ、そんな、嫌だった?」
「当たり前ですよ!!あの時の自分は嫌いです。浮かれてる。最悪ですよ」
「そうかな?あの時の黒瀬、すごく楽しそうに笑っててかっこよかったよ?今とは…別人」
「はぁ…まぁいいです。見られたのはどうしようもないですから」
「どうしてあんなに仲がよかったすばるくんと、あんな風になっちゃったわけ?」
「…水谷さんには」
!!
突然黒瀬が顔を私の耳元に持って行った。
「刺激が強すぎると思うのでまた今度」
黒瀬は耳元でそう吐くと、私の右肩をポンポンと軽く叩いてから、テラスを後にした。