遺書
 再び車へと乗り込み、奈良方面へと車を走らせる。その間も電話の着信や、メール音が鳴りやまない。途中、1度だけ電話に出た。
「行きたいところがある。夜には戻るから」
そう嘘の約束をした。これで電話やメールは少し治まるだろう。そう思った。この時の俺はもう生きる気なんてさらさらなかった。決意はまだ揺らいでいなかったのだ。それほど、この時の俺の精神状態は崩壊していた。周りが思っている以上に。本当にもう、限界だった。俺は再び車を走らせ、奈良へと向かった。
 しばらくして、車はようやく奈良県内に入った。特に死に場所を決めていなかった俺は適当な場所を探す。別に県外ならどこでもよかった。とにかく、少しでも遠い土地で、誰も俺のことを知らないようなところで死にたかった。ただ、それだけだった。
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