遺書
「そうかい。そんなことがあったのかい。あんたも辛かったんだね。でも、だからといって何も本当に死ぬことはないだろう」
「俺なんて死んだ方がいいんです。この歳になってもまだ彼女もできないし、友達だっていない。仕事だって不器用だから思うように上手くいかないし、毎日怒られてばっかりで。きっとみんなだって"俺なんて死んだ方がいい"って思ってるはずです。現に言われましたし」
「そりゃあんた考えすぎだよ。この世に死んだ方がいい人間なんていないよ」
おばあさんの優しい言葉にまた泣きそうになるが、ぐっと堪える。少しの間、二人の間に沈黙が流れた。
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