理想は所詮理想でしょ!
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放課後
私は、日高先輩…私の好きな人に呼び出されて高校の屋上へ来ていた。
「ひ、日高先輩、話って、なんですか?」
扉を開けた先で日高先輩がニッコリと笑っ私を見つめた。
はっ、恥ずかしい…。
「彩乃ちゃん、俺、彩乃ちゃんのことが好きだ。その…。付き合ってくれないか…?」
そう言った日高先輩は先程とはうって変わって気まずそうな顔で私を見つめた。
「ほ、ほんとですか!?わっ、わたしも!日高先輩が、すっ、好きです!」
真っ赤になった顔を隠すように私は俯いた。その時突然ふわっと日高先輩に抱きしめられた。
「よかったぁ…。断られたらどうしようかと思ったよ…。」
「こ、断るわけ無いです!だ、大好きですもん…!」
そう言って、先輩を見つめるとゆっくりと唇が重な…
バサッ!!!
「なーーーに読んでんの?」
「あー!!!!せっかくいいとこだったのに!!!!!!!!何やっちゃってくれてるんだよ!!!!美里!!!!!!!」
そう、さっきの物語は今人気の恋愛小説「あたしの好きな人」。
放課後ってところは私の状況と同じだけど呼び出しする先輩もいなけりゃ屋上だってないし、好きな人だっていない。
いや、ほしけどね?
「あ、あたしもこれ読んだよ〜!」
そして、私から取り上げた本をパラパラめくっているのは幼馴染の浅野美里(あさのみさと)。
身長は高いし目は大きいし鼻は高いし唇はふっくらしてるし、一言で言えばフランス人形みたいな子。
「美里〜私、読んでる途中だったのに突然こえかけないでよ〜!」
それから私は、佐野伊織(さのいおり)。顔は…うん、全く持って普通。the普通。only普通。
「ごめんごめん、帰りアイス奢るから許して?ね?」
そう言って申し訳なさそうに首を傾げながら上目遣いをしてくる美里。
「ほんと!?なら、レッツゴ〜!」
そういった私を目を細めながらニッコリと笑う美里。
…可愛すぎかこの野郎。