あ、あ、あ愛してる
「かか各パートはここ個々に……じ自宅でしし――かりれれ練習……」

和音くんの体が話しながら震えていた。


「Alice」

あたしは数歩駆け寄り、和音くんの手を握った。

和音くんの手は悴んだみたいに冷たかった。


「無理しないで、筆談しよう」

楽譜立てに置いたメモ用紙とペンを和音くんに手渡す。

和音くんは驚いた顔であたしを見て、ありがとうの手話をしメモ用紙に文字を書いた。

――各パートは個々に自宅で練習して。放課後、俺クリニックでリハビリ予約入れてるんだ。その後は仕事。伴奏、尾崎に任せるから


「えーーっ、わたしが!? 有栖川さんの代わりなんてできません」

――何勘違いしてるんだ? 俺の代わりではなく、尾崎が尾崎の伴奏をするんだ。伴奏が違えば曲の印象が変わるのは必然だ。誰が弾いても同じなら伴奏なんていらない
< 104 / 209 >

この作品をシェア

pagetop