あ、あ、あ愛してる
「只今の合唱は厚木市代表志清館高等学校による合唱でした」

アナウンスを聞き、俺たちは舞台裏口から舞台袖に入る。

厚木市代表校が舞台をはけるのを待ち、整列し舞台に上がった。

俺はピアノにスタンバイする。

「只今から横浜市代表聖奏学園大学附属高等学校の――」

いきなり、ざわめきと歓声が起こった。

場内アナウンスが掻き消される。

俺は客席が完全に静まるのを待ち、指揮をする部長への合図に、出だしの音を「ポン」と鳴らす。

部長が手を振り上げると同時に、ピアノを弾き始めた。

課題曲は第一声から好調だった。

今までで1番の出来かもしれない。

部長の指揮も気分が乗っているのか、振りも大きく調子がいいのが解る。

ソプラノの声も伸びやかだ。

舞台に上がった時は、緊張で顔が強張っていた花音も何とか無難に歌っている。

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