あ、あ、あ愛してる
日影は何もない。

立ち上がった興奮気味の観客で、ウサギの着ぐるみが埋もれてしまう。

歌いながら、ステージを右から左に移動する。

首筋や背に伝わる汗、着ぐるみの中はサウナ状態だろうと思う。

「花音」と思い切り叫びたいと思った刹那、客席から悲鳴が聞こえた。

ざわつく客席の真ん中で、ウサギの着ぐるみが沈みこむように、倒れるのが見えた。

歌も演奏も中断しベースギターを放り投げ、ステージを下りる。

「和音!?」

慌てて駆け寄る俺に、拓斗と奏汰が叫ぶ。

音もなく倒れたウサギの着ぐるみの頭を外すと、花音は汗だくでグッタリしていた。

着ぐるみの背中にあるジッパーを下げ、着ぐるみを脱がすと、花音が辛そうに息をついている。


「和音!」

拓斗が花音を抱き上げようとする俺を押し退け、花音を軽々抱き上げる。

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