あ、あ、あ愛してる

拓斗と奏汰が毎日、病室に顔を出し様子を確かめにくるのが、気の毒で申し訳ない。

花音が県大会の戦績を知らせに来た時、俺は気管切開手術をした翌々日で意気消沈していた。

――関東大会、伴奏できなくてゴメン。今、花音に何も言ってやれないし、何もできない。花音、全国大会のトロフィが見たい

筆談で花音に難題を突きつけた。

花音はただ優しく笑って「わかった。Aliceの思いを胸にしっかり歌う」と答えて、俺の体をギュッと抱きしめた。

入院から１０日目にマネジャーと事務所幹部の判断で、６ヶ月の経過観察だとか声帯麻痺や声帯手術の件は伏せて、俺の病状が明かされた。

先の見えない不安で落ち込み、声さえ出せない自分に苛立ち、病室を訊ねた拓斗に『歌えないなら、生きている意味がない』と手話で愚痴った。