あ、あ、あ愛してる
仁科副部長の声は力強かった。

あたしたちの前の学校が歌い終え、アナウンスが流れる。

舞台に上がり整列したあたしたちに向けられた視線は、県大会とは違っていた。

客席の空気が冷たかった。

和音くんのメールを思い出し、モチベーションを上げる。

――あたしたちには和音くんが付いている

キュッと唇を噛み、息を飲み込んだ。

愛美のピアノ伴奏が始まり、歌い始めたあたしの耳に和音くんの声が聞こえた。

――花音、頑張れ

和音くんの顔を思い浮かべ必死に歌った。

愛美のピアノがいつもより暖かい。

部長の指揮も県大会の時より大きく凛としている。

いつもは喉を締めつけられる1番高い音も、今日は楽に出せた。

和音くんが手術室で一生懸命頑張っていると思うと、絶対に負けられないと思った。

手術前なのに、あたしたちにエールを送ってくれた和音くんに何としても応えたかった。
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