あ、あ、あ愛してる
今はこれが精一杯
俺は花音を見送り、拓斗に車椅子を押され受付に向かった。

俺が受付嬢に話そうとする奏汰を遮り、画用紙を広げると、受付嬢は「あっ」と俺の顔を見下ろした。

―――車椅子スペースの利用を連絡した有栖川和音です。お世話をかけます

受付嬢は予約書類を確認し「ご案内します」というと、受付カウンターから出て、俺たちの前を歩いた。

大ホール1階20列目、舞台に向かって左端に案内された。

車椅子スペース席と介助用席に、それぞれ席に着いた。

ロビーから感じていた学生や一般客のヒソヒソ声や視線は、席に着いてもずっと感じた。

スカーフで覆った喉に手を当てると、奏汰が「大丈夫か」と声をかけた。

開演の案内放送が流れ、5分後に幕が上がり聖奏学園高等学校の名と曲目が紹介され、花音たちが舞台に整列した。


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