あ、あ、あ愛してる
空気がただ漏れる。

それでも懸命に花音たちの姿が舞台袖に引くまで呼び続けた。

花音たちが舞台袖に引くと、俺たちは会場を出た。

俺の体力を考え、結果発表までは残らず病院に帰ると言う。

歌い終えた花音たちとロビーで会った。

感動をどう伝えていいのか、思いをどう伝えていいのか言葉が浮かばない。

浮かんだのは「ROSE」の歌詞と曲だった。

俺は出ない声を絞り出し歌った。

ただひたすら、がむしゃらに声を振り絞る。

――出ろよ、俺の声。歌わせてくれよ

念じるように声を出そうとした。

ただ空気が漏れるだけの喉から、微かに嗄れた頼りない声が徐々に出始める。

掠れ掠れに聞こえる自分の声に苛立ちながら、微かに出た声に胸が詰まった。

――これが今の俺の精一杯だ。それでも歌いたい

花音に俺の声を聞いてほしいと思った。

< 158 / 209 >

この作品をシェア

pagetop